タバコは本数が少なくても危険!

20年以上も前のことですが、ある教授の講演で、久山町研究では「喫煙は脳卒中のリスクを下げる」と聞いたことがあります。これは脳卒中になる前に(なることもできずに)肺がんや心筋梗塞で死んでしまうからということみたいです(注)。

 

タバコに関しては良い話はありません。恐ろしいことに、1日20本喫煙した場合の虚血性心疾患と脳卒中のリスクを100とすると、1日1本の喫煙でも40〜50のリスクが生じるので、タバコは本数が少なくても非常に危険です。メタアナリシスでも、喫煙歴のないヒトと比べて、現在も喫煙しているヒトのリスクは脳梗塞で約2倍、脳出血で1.6倍でした。喫煙本数との関係については、やはり喫煙本数が少なくても脳卒中リスクは急速に上昇し、わずか5本/日の喫煙で30本/日以上のリスクの半分以上に達し、10本/日の喫煙でほぼ最大リスクに近づいていました。禁煙すると最初の3年で脳卒中リスクはかなり(44%)低下しますが、そこからさらにリスクが減少するためには10年以上が必要です。タバコは本数を減らしても脳卒中予防効果は少なく、やはり完全な禁煙しか手立てはないようです。

 

注:論文となったものでは、やはり喫煙は脳卒中のリスクとなるようです。

大豆か魚か、それともオメガ3サプリ?

久山町研究(注)では、食事の植物性タンパク質が多いと脳梗塞が減少し、動物性タンパク質が多いと脳出血が半分ほどに減少していました。植物性タンパク質摂取量は大豆を使用した食品との関連がもっとも強く、動物性タンパク質摂取量は魚、次いで乳製品や肉、卵との関連が強くみとめられました。魚の摂取量と脳卒中に関するメタアナリシスでは、魚の摂取量が多いと脳卒中リスクはわずかですが低下していました。魚の摂取による有益性はアジア地域、女性、(脳梗塞よりも)脳出血に対して顕著でした。10年以上追跡してもリスクは1割減少する程度なので、それほど大きな効果ではありませんが、魚を食べると脳卒中(特に脳出血)が減少するようです。
 

エイコサペンタエン酸(EPAドコサヘキサエン酸(DHAなどオメガ3多価不飽和脂肪酸(魚の脂)の心血管病予防効果をみたランダム化比較試験の結果が2018年に3つ報告されました。REDUCE-IT中性脂肪が高く、ほぼ全例にスタチンが処方されているヒトに、約4グラムもの大量のEPA濃縮化合物を投与し、心血管病や脳卒中が25-28%も減少しました。一方、大量投与ではないVITALASCENDでははっきりとした有効性は示されませんでした。大量投与でないとダメなのかというと、その後のSTRENGTH研究ではオメガ3大量投与でも無効でした。まとめるとオメガ3多価不飽和脂肪酸「サプリ」では、脳卒中心筋梗塞は予防できないとなってきています。

 
注:久山町研究は1961年より福岡市近隣の久山町において、九州大学第二内科(現、病態機能内科学)によって開始された一般住民を対象とした疫学研究です。当初は脳卒中や高血圧などの血管危険因子の研究が主目的でした。

ヨガと脳の健康

ヨガはゆったりとした動きを基本とし、インナーマッスルを鍛える筋トレ効果もあります。動きとともに「呼吸」が重要で、鼻呼吸でゆっくりと吸って、吸った時間の倍の時間をかけて吐き出します。呼吸の通り道を感じて、呼吸に集中し、瞑想を行ないます 。ヨガの歴史は長く(2000年以上昔のインドに由来する)、必然的に多くの流派と、身体操作にも様々な違いがあります。しかし、ヨガの真髄が「心とからだの融合を目的とする」ことに変わりはありません。西洋でヨガがはやりだしたのは20世紀に入ってからで、研究論文は1948年から出現し、2000年をまたいで急激に増加しています。ヨガは運動量としては一般的に軽度です。したがってヨガはエクササイズというより、どちらかというと瞑想に重きをおくものでしょう。

 

ヨガの医学的効果としては、心血管系疾患、糖尿病、筋肉・骨格系のみならず、不安やうつ、不眠などメンタルヘルスにも良い効果があります。4つの生活習慣について検討したものでは、もっとも心血管系疾患リスクを減少させる効果があったのはヨガで、次にウオーキング、地中海食的食習慣の順でした。禁煙できた場合の効果はもっとも大きいものの、禁煙自体の成功率が低いため、喫煙に対する介入効果は不十分でした。ヨガには高脂血症を改善し、血圧を下げ、体重を減らす効果もあります。ヨガは用具や高価な薬剤が不要で、自宅(おうちヨガ)や近場でできるという利点もあります。

久しぶりに怒りのメールを書きました

私はさる医学部テニス部のOBなのですが、10月のOB戦と医局対抗が中止となり、ハラをたてているところです。以下、時系列で記録を残しておこうと思います。ちなみに昨日の福岡の新型コロナ感染者数は5人でした。

 

2021年10月27日

Q大医テニス部のメールアドレスを無くしてしまい、今やっとスマホの中に見つけてメールしています。昨日、二内科テニス部から医局対抗中止の連絡を受け、以下のような「怒りの」コメントを返しました。

○○です 医局対抗に関しては、日曜に十分練習ができたので、すでに満足感があります(○○先生、お礼が遅れました)。しかし、今の新型コロナ感染状況では中止する必要はなくて、むしろ健康増進のために(多少感染状況が悪くても)テニスは推奨すべき項目かと思います(少し前のNHKあさイチでもテニスとジョギングはすべしと言ってました)。医局対抗が中止になったことよりも、まったく科学的思考ができないQ大の医学部が残念ですね(卒業生としては恥ずかしい—とも言えます)。責任者はだれなのでしょうか?なお、この文面は責任者の方に転送していただいても結構です。

以上「怒りにまかせて」書いたので、コントロールできてないフォアハンドのような文章になってしまいました。少し補足します。

(1)現在の新型コロナ有病率は極めて低いことから、感染のリスクは極めて低いので、屋外で行なうスポーツを禁止する合理性はない。
(2)前回までの流行と今の状況が決定的に違うのは、ワクチン接種率が急速に上がっていることです(すでに米国は追い抜いています [注:10月27日時点で、G7の中では上から2番目] )。また、イスラエルでの2回接種の効果について、統計学的なシンプソンのパラドックスに惑わされていない解析では、ワクチン有効性が接種完了から月日がたっても80%を超えており、3回目接種(ブースター)の初期効果の論文(N Engl J Med Sep 15, 2021)での有効率が95%など、潮目は変わっています。
(3)参加するOBはほとんどがワクチン接種スミであり、ワクチンパスポートを持っている状態であること。

以上を勘案して、それでもテニスはままならないと大学が判断するとしたら、九大関係者として恥ずかしくはないでしょうか?

さらに(1)への補足の補足ですが—PCR検査陽性の時にほんとうに感染している条件付き確率=疾患頻度などの事前確率X検査の感度÷検査の陽性率となります(ベイズ統計学の1番簡単なところ)。今の感染状況だと、たとえ検査陽性でもほんとうに感染している確率は5000分の1とかになります[注:1000分の1くらいにしておいた方が無難か?]。この数字をもってテニス中止とか本当にハラが立ちます。

 

2021年10月28日

○○先生、○○先生、並びにOBの皆様

いつも大変お世話になっております。Q大医学部硬式庭球部内務の○○です。
この度は貴重なご意見をいただき、大変感謝申し上げます。

医学部硬式庭球部の活動につきまして、大学学生係の管理下で行っているものであります。その為、先日予定されておりました医局対抗戦をはじめ、医学部硬式庭球部が主催いたします大会やイベント等は、学校の許可なしでは行うことが出来ません。全て事前に活動計画を医学部学生係に提出したのち、学生係と大学の先生方との会議に取り上げていただき、開催の許可・禁止が判断されております。開催に関しまして、医学部硬式庭球部の部員には決定をする権限がございません。

幹部としましても、大会に先行して先生方をお迎えする準備を進めて参りましたが、中止の判断により、先生方のご期待に添えない結果となってしまい大変不甲斐なく感じております。
毎年行われる先生方とのイベントは先生方との交流ができるだけでなく、私達テニス部のモチベーションを高めていただける貴重な機会ですので、昨年度に引き続き今年度のイベントの中止判断は残念でなりません。
大変申し訳ございませんが、ご容赦いただきたく存じます
頂いたご意見につきましては、硬式庭球部顧問の○○先生を通じて学生係に提出させていただきました。改めてこの度は貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。

(以下略)

 

2021年10月29日

Q大医学部硬式庭球部の皆様、OBの皆様

○○です。大変丁寧なメールありがとうございました。この問題はOB戦が中止となった時に声をあげるべきだったのかもしれません。私は個人的にOB戦中止に対しても非常に違和感がありました。ただあの時、何か言おうかなと思ったのですが、右肩を痛めていてテニスもできず、モチベーションが下がっていたので、発言する気になりませんでした。

以下の文面ではあやまっていますが、謝罪する必要はありません。むしろ自分に責任のないことに、とりあえずあやまっておけというのは、大事な問題に関してはしないほうがよいと思います。岩田健太郎さんの「あたまが毒リンゴになった若者と王国の話」という絵本のなかに、疫病がアウトブレイクした王国の「会議」で、「何かあったらどうするんだ」と言われて、「何かあったらって、何かって誰もわからなかったけど、そう言われてみんな不安になった」という場面があります。繰り返しますが、我々があやまる必要はありません。Q大の責任者が公に説明すべきです。

 

後輩より:いいね!ボタンがあれば○○先生の意見に押したのに、、これからも健全かつ純粋にテニスに精進するQ大医学部テニス部であることを願っています。

 

 

 

医師国家試験には通らないだろう

医師国家試験の問題で、今の時点で公共交通機関や特に理由があって定められた以外の場所でマスクをしなくてはいけない—を選択したヒトは地雷問題で一発不合格ではないか。

 

国民全員にもしくは無症状のヒト全員にPCR検査をしなくてはいけない—を選択したヒトも一発不合格だろう。

どこかの大学が全学生にコロナウイルスに感染してないことを確認するためのPCR検査をするらしい(まさか医学系の大学ではないですよね)。

 

感度0.7、特異度0.9と仮に設定して、事前確率を高めに(1,001人に1人感染者がいる)とするとして1,001人を検査すると

 

検査陰性の人数は1X0.3+1,000X0.9=0.3+900人なので、検査陰性の時コロナウイルスに感染している確率は3,000分の1→陰性でおめでとうございます!陰性なら安心ですね(3,000分の1ではなく、3,001分の1ではないかというツッコミはやめてください)。

 

検査陽性の人数は1X0.7+1,000X0.1=0.7+100人なので、検査陽性の時にコロナウイルスに感染している確率は1,000分の7→めでたしめでたし!!陽性が出ても、心配しなくてよいので、安心ですね。

 

こんな検査をして、良かったのでしょうか?安心できるならいいじゃないかと誰かが言っています(私ではありません)。